ファンタシースター

 

セガMark−III、マスターシステム対応ソフト
1987年12月20日発売 定価6,000円
4M+B.B(5)

プロローグ
 AW342年、アルゴル太陽系第一惑星パルマ星は、国王ラシークのもとに繁栄を極めていた。アルゴル太陽系の他の惑星を植民地として開拓し、ファームプラントおよび資源採取のための計画も順調に進んでいた。
 またパルマ星のスペースポートからは、第二惑星モタビア星行きの星間連絡船が絶え間なく行きかい、数年後には第三惑星デゾリス星にもスペースポートが着工することになっていた。
 ところが、この年の春、不気味な噂が流れ始めた。ラシークをはじめとする支配階級の貴族たちが邪教にとりつかれ、ラシークの永遠の命とひきかえに、このアルゴル太陽系を売りわたしてしまったらしいと。その噂は現実となって現れた。各惑星のいたるところに異形の者が横行し、人々の暮らしを脅かし始めたのである。何かとても恐ろしいことが起ころうとしていた……。
*  *  *
 「どうしたの、にいさん!」
 少女の叫び声が、あたりの空気を切り裂いた。
 少女の名前はアリサ。ここパルマ星の中心都市カミニート居住区で育ち、今年15歳になる。少女の兄はネロといい、18歳。スペースポートで荷揚げ作業員として働いている。幼い頃に両親を亡くし、兄妹ふたり肩を寄せあって暮らしてきた。
 ロボットポリスはぼろ布のようになったネロをほうり出すと、アリサをあざ笑うかのように、冷たく言い放った。
 「ラシーク様のことを、こそこそとかぎまわりやがって! 痛めつけられたくなかったら、これからは、せいぜいおとなしくしていることだな。」
 冷たいコンクリートの上に、アリサと瀕死のネロが取り残された。アリサが手を握ると、ネロはうっすらと目をあけ、アリサを見つめた。
 「アリサ、聞いてくれ。ラシークは、この星に巨大な災いを招いてしまった。世界は今、破滅に向かっている。オレは、ラシークが何をたくらんでいるか探っていたんだ。けれど、オレひとりの力では、どうすることもできなかった!」
 ネロの目に涙が浮かんだ。それは、アリサが初めて見る、兄の涙だった。
 「ラシークのことを探っている途中で、タイロンという強い男のことを聞いた。奴と手を組めば、ラシークを倒し、この星を救うことができるかもしれない。アリサ…オレは残念でならない……何もできなかったことが、そして、おまえをおいて逝かねばならないことが……。」
 「にいさん、にいさん!」
 アリサの声が悲鳴に変わった。だが、ネロの目は二度と開くことはなかった。
 やがて、あたりを夕闇がつつんだ。アリサの目には、涙のあとが残っていたものの、その瞳は強い力に満ちていた。アリサはネロが腰につけていたショートソードを胸に抱き、誓った。
 「にいさん、わたしはあなたの遺志をつぎます。きっと、ラシークを倒して平和な暮らしをとりもどすわ!」
 そして、アリサの長い闘いの旅が始まったのだ。
(マニュアルより)
ゲームの紹介
 ’87年1月に発売されたファミリーコンピュータ用ソフト「ドラゴンクエストII」により、RPGブームを迎えようとしていたこの年の年末に、「ファンタシースター」は登場しました。私がマスターシステムを購入するきっかけにもなった思い出深いタイトルであります。当時としては大容量の4メガビットROMを採用し、美しく表情豊かな舞台を構築。バッテリーバックアップを使ったセーブシステムも、まだまだ珍しい存在でした。
 当時のRPGといえば、欧州の中世ファンタジーの世界観というのが相場でしたが、この作品ではSF要素が盛り込まれ、宇宙船に乗り3つの惑星を行き来するというのが新鮮でした。地上を走る乗り物も用意されており、険しい地形を突き進む様は爽快でした。
 戦闘シーンでは、アニメーション処理が施されており、敵モンスターが、まるで生きているかのようにグネグネと動きながら攻撃してきます。プレイヤーの攻撃も、武器やマジックの軌跡が視覚的に表現されており、見応え抜群です。今では当たり前の事ですが、エンカウントする地形により、戦闘シーンの背景も変化し、臨場感を高めるのに成功しています。しかし戦闘バランスは良いとは言えず、3Dダンジョン内の袋小路でマンモスの集団に襲われた時は、たとえようもない絶望感に襲われます。
 極めつけは、はやり「3Dダンジョン」の存在でしょう。3Dダンジョン自体は過去の作品にも多く見られましたが、「ファンタシースター」に登場した3Dダンジョンは、滑らかなスクロールアニメーション処理が施されており、まるで自分がその場に居るかのような臨場感を味わえました。ここで流れるBGMも非常に評価が高いですね。この3Dダンジョンを作ったのはメインプログラマーの中裕司氏。
 セガ初の本格的なオリジナルRPGということもあり、ゲームバランスが調整不足気味であったり、突拍子も無いイベントがあったりと、荒削りなところはありますが、これらの欠点を補って余りあるほどに、魅力的な作品に仕上がっております。そして後にはシリーズ化され、セガの看板タイトルへと成長していきます。

 

もどる