PCエンジン(タ行)


天外魔境 ZIRIA(ハドソン/レッドカンパニー 1989年6月30日発売 7,200円)
世界初の、CD-ROM専用のPCエンジンオリジナル大作RPG。私はこれをきっかけにPCエンジン本体を買いました。高かった……。
企画・監督はレッドカンパニー代表の広井王子氏。P.H.チャダ氏が執筆した「FAR EAST OF EDEN/ZIRIA」を原作に(実は筆者も書物の架空のもの)、ハドソンがゲーム化。
舞台は「ジパング」と呼ばれる国。日本っぽいけど日本じゃない、豊かな自然に囲まれ、そこに住んでいる人たちの生活文化はどことなく日本の江戸時代のそれに近い。そんな和風ファンタジーの世界が面白い。
このジパングを支配せんと企む一団「大門教」を倒す為、「火の一族」の子孫である主人公「自来也」は旅立つ。冒険の途中、同じく火の一族である2人が仲間になり、大門教に立ち向かう。
CD-ROMの大容量を活かし、ゲームの舞台はとても広大。マップの広さはもちろんのこと、そこに登場するキャラクターやモンスター等、ボリューム満点。キャラの台詞は本体内蔵のサンプリング音源を使った、声優による音声で喋るのも特徴。これも大容量のCDならでは。出演声優には何故か大竹まこと氏と永井真理子氏がゲスト出演。
マップも只広いという訳ではなく、プレイヤーが広大なフィールドで途方にくれないよう、順を追って進められるような配慮がされている。フィールドマップは「国」という単位で仕切られていて、其々の国にボスが待ち構えている。章仕立てのような構成になっている。判りやすい反面、自由度は低くなっている。
ゲームシステムはオーソドックなものを採用。コマンド式の、いわゆるドラクエタイプだ。ゲームバランスもよく、序盤の最初のボスのところまでを除けば、あとは特に意識して経験値稼ぎをする必要もなく、サクサクと物語は進行する。段(レベル)が上がる時には体力と技力が全回復するという親切設計。ボス直前に段が上がるように経験値を調節して進んでいけば、ボス戦も楽になる。
戦闘シーンはシンプルなコマンド式のターン制。これといった特徴はないが、和風の世界観に合った膨大な種類のモンスターのデザインは見ていて楽しい。魔法に該当する「術」はアイテム扱いになっていて、主人公はその中から好きな術を選んで持つことになる。持てる数には制限があるので、全ての術を持ち運ぶことは出来ないのだ。
CD-ROMのネックとして挙げられるシークタイム。このゲームでも、町や村の出入り、敵とのエンカウント等で頻繁にアクセスが入ってしまう。私みたいな古い人間にはどうってことのないアクセス時間だが、ノーアクセスのFCで育った世代にはきついものがあるかも。もちろんアクセス時間は短いことにこした事は無いのだが。以降の光ディスク媒体のゲーム制作に課題を残したといえるだろう。
CDから直接再生されるクリアな生音、声優による声の演出、容量を生かしたアニメーション、等々、現在発売されている全てのCD-ROM/DVD-ROMゲームの骨格が、この作品で形成されたといってもいいだろう。PCエンジンの底力を見せてくれた作品として強く印象に残っている。
CD-ROM黎明期にこれだけの完成度でまとめあげたハドソンの力はもっと認められても良いと思います。